個人事業主のなかには自宅以外の住所を公開して自宅の住所は知られたくないと思う人がけっこういます。個人事業主やフリーランスは利益が少ないうちは税制面で法人よりも優遇されるうえ開業届の手続が非常に簡単なので誰でも書類を作成して事業登録することができるメリットがありますが、開業届や名刺に自宅の住所を記載することが悩みの種になることがあります。
それは、個人事業主が名刺交換や事業の紹介で他人に事業所の住所を教えることは、そのまま自宅の住所を教えることに繋がりプライバシーの侵害に繋がる可能性があるからです。
しかしこの問題はバーチャルオフィスを利用することで解決します。バーチャルオフィスで借りた住所は開業届や名刺に記載することも可能な他、会社を登記する際に利用することも可能なので自宅の住所を公開せずに済みます。
自宅の住所がバレることのデメリット
個人事業主が自宅の住所と事業所の住所を兼用すると顧客は事業主の自宅を知ることになります。
ただし、事業主が自宅の住所を知られると以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
住まいの外観で会社の良し悪しまで判断されてしまう
まず第一に誰もが立派な一軒家や外観の綺麗なマンションに住んでいるとは限りません。人によってはGoogleマップで住所を検索されて出て来た自分の家の画像を見られることに抵抗を感じる場合もあります。
なぜなら人は視覚情報から多くの固定観念や先入観を抱く生き物なので、渡された名刺に記載された住所を検索して想像していたようなビルの外観が出てこないどころか古いアパートが検索結果に表示されたりするとなぜかがっかりすることがあります。
古い家に住んでいるとか、古いアパートに住んでいるとか、そういうことは人としても社会人としてもなんら問題はありません。
ただし、それが個人事業主としてビジネスをしている人の自宅である以上、人は勝手なイメージを作り上げ住まいのイメージも勝手に作ってしまうのです。
そして、そのイメージが崩れてしまうとがっかりしてしまうのです。
例えば下記のような感じです。
- これって会社の住所というより自宅住所じゃないの?
- こんなアパートに住んでる人と取引して大丈夫?
- もしかして騙されてるのかも?
これらは全て人の勝手な先入観が作り出したものですが、ビジネスライクで人の情報に接する時の人間の心理は面白いほど勝手な固定観念に支配されるもので、視覚情報つまり住所の外見・外観が重要になるのです。
仕事とプライベートの境界がなくなってしまう
とはいうものの、人によっては自分の住まいの外観を知られることになんの抵抗も持たないという人もいるでしょう。
また、専門的な技能職となれば住所の外観などよりもその人の技術を重視する傾向が強く、名刺に書かれた住所がどこであろうと気にしない傾向が強い顧客層が多い業界もあるはずです。
例えば、筆者の実家は長い間テック系のIT企業として自宅の住所で登記していましたが、それが原因でビジネスに支障が出たことはほとんどありませんでした。
ただし、そんな場合でも名刺に掲載する事業所の住所と自宅の住所は別にしておいたほうが良いです。
なぜなら、顧客に名刺を渡すということは自分が不在の間に自宅に来られる可能性があるからです。
そもそも自宅の一室を来客用の部屋として利用する人もいますが、そうでないなら仕事とプライベートは厳密に分けておかないと、気付けばいつでも気軽に来られてしまうような状態に陥ってしまい、気が休まる暇がなくなってしまいます。
ネットショップの運営も個人事業主に該当する
ここまで自宅の住所と会社の住所を同じにするとどんなデメリットがあるのか解説しましたが、これはネットショップの運営で収益を出している人にも該当します。
法的にはネットショップの運営者は法人でなくても個人事業主という扱いになります。
また、ネットショップで商品を販売する場合は必ず特定商取引法の表記が義務付けられますが、特商法の表記には事業者の氏名・住所・電話番号が含まれます。
ネットショップの形態には自分でサーバーを借りて販売サイトを立ち上げる人もいますが、多くの場合なにかしらのプラットフォームを有料で使用するケースが多いです。
例えば下記のようなプラットフォームが有名です。
- ASPカート
- BASE
- STORES
- shopify
- ECモール
- Amazon
- ヤフー
- 楽天市場
- フリマ
- PayPayフリマ
- ラクマ
- メルカリ
- オークション
- ヤフオク!
- モバオク
- ハンドメイド商品販売プラットフォーム
- クリーマ
- minne
上記のプラットフォームはどれを利用しても基本的には特定商取引法に基づいて販売者情報(氏名・住所・電話番号)を公開する義務があるので、プラットフォームごとに色々な形で義務を履行できるよう便利な方法を提案しています。
その代表例が BASEに代表される販売者の非公開設定やメルカリなどで多用される匿名配送です。
プラットフォーム各社の具体的な施策については下記の関連記事で詳しく解説しているので参考にされると良いでしょう。
自宅の住所を知られず事業登録できる2つの方法
以上の理由から、法人なりしていない個人事業主やネットショップの販売者のなかには事業所と自宅の住所は別にしておきたいと考える事業主はけっこうたくさんいます。
そして、そう考える個人事業主が開業届に記載する住所として利用できるものには2パターンあります。
ひとつ目がレンタルオフィスで、2つ目がバーチャルオフィスです。
- レンタルオフィス
- バーチャルオフィス
以下、レンタルオフィスとバーチャルオフィスで開業するメリット・デメリットについて順番に解説します。
レンタルオフィスの住所で開業するメリット
- 開業届の住所に利用できる。
- 会社の住所として登記できる。
レンタルオフィスで開業する人は個人事業主・法人ともに非常に多く、個人事業主が開業届に登録する住所として利用できるというメリットがあります。
世のなかに存在するレンタルオフィスの多くがそもそもそういったニーズに応えるためのものであるため、レンタルオフィスは今後も増え続けるでしょう。
レンタルオフィスはビルやマンションの一室を賃貸で利用する契約が多く、支払いも月極めの物件から1年契約の物件まで様々です。
また、レンタルオフィスのようにプライベートはありませんが、コワーキングスペースやシェアオフィスといったフロアのフリースペースを他人と共有するサービスもあります。
これらは個人事業主に限らず法人として入居できるように登記利用が可能な物件を用意しているものが多く見られます。
レンタルオフィスの住所で開業するデメリット
- ランニングコストが高い。
ただし、レンタルオフィスはビルやマンションの一室を利用する以上、賃料がけっこう高いというデメリットがあります。
また、賃料も数万円程度なら安いものですが、都内など地価が高い地域ではひと月10万を超えるような物件も珍しくないため、軽々しく利用できるものでもありません。
そのため、レンタルオフィスほどプライベートを確保する必要がないのであればコワーキングスペースやシェアオフィスといったグレードが下のサービスを利用することでコストを大幅に抑えることが可能です。
コワーキングスペースなら1時間1,000円など時間利用できる施設が多いですし、シェアオフィスもコワーキングスペースほど安くないですがレンタルオフィスと比べれば月額賃料は半額以下に抑えることが可能です。
バーチャルオフィスの住所で開業するメリット
- 物理的な空間を借りず住所だけ借りることができる。
- ランニングコストがかなり安い。
レンタルオフィスやコワーキングスペース・シェアオフィスといいたスペースを利用して開業届の住所に記載する方法は有効ですが、さらに安く住所だけ手に入れたいという人のためにバーチャルオフィスというサービスがあります。
バーチャルオフィスとは住所貸しのことで、バーチャルオフィスの運営会社が提供する物件の住所を月額制や年会費制で利用するというものです。
バーチャルオフィスの住所は個人事業主が名詞に記載したり開業届に登録する住所として利用できるものが多く、ほとんど全てのバーチャルオフィス業者は開業届に対応している他、法人として登記利用できるものも多いです。
コストは初期費用と月額料金に加えて郵便物が届いた場合の転送費用などが上乗せされますが、東京都内など競争の激しい地域なら探せば月額300円~3,000円くらいの間でたくさん見つかります。
下記は筆者が個人的にみつけた格安バーチャルオフィスについてまとめた格安バーチャルオフィス【住所のみ・登記】比較19選を参考にされると良いでしょう。
バーチャルオフィスを利用して開業するメリットはレンタルオフィスなどの物理的な空間を借りるわけではないのでランニングコストを大幅に抑えられることです。
例えば個人事業主で郵便物が届くような業態ではない場合、住所利用のみなら月額1000円の格安バーチャルオフィスを利用することも可能ですが、開業届の住所にはバーチャルオフィスの住所を記載することができます。
つまり、事業所の住所を借りるコストとして毎月1,000円のランニングコストしかかからないのです。
また、バーチャルオフィスの住所で開業届を提出すると、住所を検索されたとしてもバーチャルオフィスの物件の住所が検索されるので、自宅がGoogleマップで見られるような心配もありません。
このように個人事業主がバーチャルオフィスを利用すると、物理的な空間を借りることなく自宅の住所が他人にバレる心配を解決できるメリットがあるのです。
バーチャルオフィスを利用するデメリット
一方で、バーチャルオフィスを利用することには下記のように多少デメリットがあるのも事実です。
- バーチャルオフィスの利用者は同一住所に複数人の利用者がいる。
- 格安プランは都市部に多く、地方には格安プランが少ない。
複数の利用者でひとつの住所を共有する
まず、同一住所に複数人の利用者がいるとはどういうことかというと、住所をシェアリングしているので住所検索すると自分の会社の他にも色んな会社の名前が検索結果に表示されるということです。
もしも自分が利用しているバーチャルオフィスの他の利用者が悪徳商売をしてネットで叩かれたりすると、その会社名と住所が晒される危険性があります。
そのため、バーチャルオフィスの運営会社は入会審査を厳しくしていますが、入会時に真っ当な事業者だったとしても後々悪事を働くことがあるのも事実です。
そのため、バーチャルオフィスによっては住所を検索するとインチキ商法で評判の悪い業者の名前や運営者の名前が住所と一緒に表示されることもあります。
格安プランは都市部に多く地方には少ない
バーチャルオフィスはニーズの大小で価格競争が行われる傾向の高いサービスなので、都市部ほど価格破壊が起きやすいというのが実情です。
いわゆる月額300円のような激安プランも東京都内の事業者が多く、月額3,000円程度で利用できる優良バーチャルオフィスも都内なら多数ありますが、地方の平均相場は月額10,000円くらいで格安業者が非常に少ないです。
そのため、人によっては全国展開しているDMMバーチャルオフィスやGMOオフィスサポートなどの大手バーチャルオフィスの地方の店舗を利用するケースも多いです。地方といっても名古屋・大阪・京都・福岡といった大都市です。
もしも自分の住んでいる地域に大手の格安バーチャルオフィスが出店していなければ、別の格安バーチャルオフィスを自力で探すしかありません。
個人事業主におすすめの格安バーチャルオフィス
個人事業主がバーチャルオフィスを利用することのメリット・デメリットについて理解して頂けたところで、デメリットを解決する方法を提案します。
地方のバーチャルオフィスは月額料金が高い傾向があるためそもそも利用をためらう人も多いことでしょう。
ただし、下記に紹介するバーチャルオフィスなら月額基本料金もかなり安く抑えることができます。
★GMOオフィスサポート
GMOオフィスサポートは大手GMOグループが運営する格安バーチャルオフィスで全国13店舗の住所を利用できます。
月額料金も最安プランが660円なので、開業届に必要な住所だけ必要な人や名刺に自宅の住所を書きたくない人におすすめです。
転送なしプラン以外は全て郵便転送が付帯されるだけでなく送料も150ℊまで無料です。
また、初期費用が完全無料なうえに3カ月分の月額料金が無料なのは超お得です。
- 転送なしプラン 月額660円 登記不可
- 月1転送プラン 月額1,650円 登記可
- 隔週転送プラン 月額2,200円 登記可
- 週1転送プラン 月額2,750円 登記可
- 店舗:銀座・渋谷・新宿・青山・秋葉原・目黒・横浜・名古屋・京都・梅田・心斎橋・神戸・博多・天神
\初期費用+3カ月分の月額料金が無料!/
GMOオフィスサポート 公式サイト
★DMMバーチャルオフィス
DMMバーチャルオフィスは大手DMM.comが運営する格安バーチャルオフィスで全国5店舗の住所を利用できます。
最安プランのネットショップ支援プランは月額660円に郵便転送サービスが週1回程度で付帯される優れものです。
個人事業主なら自分の会社のサイトの運営者情報にDMMバーチャルオフィスの住所を掲載することが可能です。
- ネットショップ支援プラン 月額660円 登記不可
- ライトプラン 月額1,650円 支店登記のみ可
- ビジネスプラン 月額2,530円 登記可
- 店舗:銀座・渋谷・横浜・名古屋・梅田・福岡天神
★ワンストップビジネスセンター
ワンストップビジネスセンターは全国展開型の格安バーチャルオフィスとして非常に有名です。
全国の全域ではありませんが、かなりの地域をカバーできているので、自分の住む地域で格安バーチャルオフィスが見つからなかった場合はワンストップビジネスセンターを探してみると良いでしょう。
料金プランは冒頭のGMOやDMMほど安くはないですが、月額5,000円程度で登記できる住所を利用できます。
なお、全てのプランに登記利用と郵便転送サービスが付帯されており、100gまで送料は無料です。
- エコノミープラン 月額5,280円
- ビジネスプラン 月額9,790円 転送電話
- プレミアムプラン 月額16,280円 転送電話・電話代行
★karigo
karigoも全国展開型の格安バーチャルオフィスとして有名ですが、店舗展開の規模やカバーしている地域は国内NO.1です。
全ての地域に出店しているわけではありませんが、国内のほとんどの地域に出店しているので、自分の住む地域で格安バーチャルオフィスがみつからない場合はkarigoを探してみると良いでしょう。
karigoの料金プランは3プランで全て登記可能となっています。
また、karigoの月額料金は店舗によって異なるため、必ず公式サイトで料金を確認する必要がある他、WHITEプランは個人と法人に分かれています。
ちなみに個人事業主が利用する場合は商用利用なので法人価格が適用されます。
- WHITEプラン
- 個人:月額3,300円~
- 法人:5,500円~
- ORANGEプラン 月額11,000円~
- ORANGEプラン 月額11,000円~
\出店地域・店舗数全国NO.1/
Karigo 公式サイト
以上、個人事業主が利用するのにおすすめの格安バーチャルオフィスを最後にいくつか紹介しましたが、バーチャルオフィス各社が提供できる住所は限られています。
なかには上記のバーチャルオフィスの住所に自分の利用したい住所がない場合もあるでしょう。
そういう場合は地域ごとにバーチャルオフィスをまとめた紹介記事を用意していますので、地域別で探すから探して頂けれるはずです。
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